普通、ソーラーパネルの発電量の計算は1日とか1年を通した「積算値」で計算するようです。平均値に関する文献は一杯有るんですが、ピーク時についての詳しい文献はなかなか見つかりません。ただなんとなく「ピーク時で何処まで行くのか?」が知りたくなって調べてみた次第。
ソーラーパネルの定格値は、太陽光の強さが「1,000W/m2時の発電量」と言うことになってます。これは、地表まで届く太陽光のエネルギー量のピーク?が、北半球の主要な都市があるような緯度では「だいたい1,000W/m2」という事だかららしい。だいたい?
とは言え、実際には季節の影響やら朝晩の時刻の影響やら色々。実のところどのくらい変動するのか?
すると「太陽定数」なるものが最初に出てきて、太陽光線のエネルギー量は1,366W/m2だそうな。但しそれは真空中の値。では大気圏を通過した結果、どのくらい減衰して地表に届くのか…という詳しい式が中々見つからない。
そして、ようやく見つかったのが大気圏の厚みを示すAM(エアマス)という単位。しかしAM値から減衰がどのくらいになるのか…という関係式が日本語の検索ではこれまた見つからない。英文検索に切替えて、英語版のWikipediaのAirmassでようやく式を見つける。そこからグラフをプロットしたのが下図。

AM≈1/sin(θ) [近似式] I=1.1×1,353×0.7^(AM^0.678) θ:仰角, I:地表付近に届くエネルギー量
横軸が太陽の仰角(高さ)、縦の破線で左から冬至(31.9˚)、春分秋分(55.3˚)、夏至(78.7˚)の南中時の仰角を示しています。
こうやってみると、大気圏を抜けて地表付近まで届く太陽光のエネルギーは季節による増減幅は意外に少なく、冬至でも859W/m2、春分秋分〜夏至にかけて常に定格の1,000W/m2前後くらいですかね。「だいたい1,000W/m2」というのも、まぁうなずけます。
しかしこれは、光線に対して直角な面で受けた場合の話。冬場は太陽の仰角が下がるので、自動車のルーフのような水平な面に対しては、光線はかなり斜めに入射するので有効な受光量が減ります。その影響を計算したのが次のプロット。

I2=I×sin(θ) I2:受光面に有効なエネルギー
冬至には454W/m2まで、ダイナミックに落ち込んでいます。春分秋分でも814W/m2くらい。水平面と言う事でこれが地表が受け取るエネルギーに近く、冬寒いのもうなずけます。
実際の所200W定格のパネルにて、1月末頃の南中時(仰角約40˚)・晴天にて、充電器出力で120Wくらいってところでした。グラフ上からもまぁまぁ合ってるようです。
因みに、発電施設では一般的に30°の傾斜を付けてパネルを設置するそうです。その場合のプロットがこちら。

夏至の入射量がちょっとだけ下がりますが、冬至と春分秋分の入射量が大幅に増えます。こうやって発電施設では、固定したパネルのままで通年を通して太陽の動きに対して最適な角度を確保している訳で。
結論として、車載のような水平設置だと、ちゃんと30˚の傾斜が付いた発電所や屋根設置のパネルと比較して、春秋冬の発電量がかなり落ちるようです。