モバイルバッテリーの単位の話

電力はW

電力は電圧×電流です。割りと唐突ですが。

例えば1,000Wの電気ストーブ、100V/10Aなんですが「このストーブは10Aです」なんて言わない。200Vの10Aなのか100Vの10Aなのかで意味も違う。

つまり、A(電流)だけでは、ほんとうの電力は分からないのです。

電気自動車のモーター出力もW。因みにWとHP(馬力)は換算可能です。

電力の「量」を表すのはWh

ちなみにW(電力)とA(電流)の単位って他の単位とちょっと違って、実は単位時間当たりの量を示しています。具体的に言うと1秒あたりの量。km/h(時速)とかm/s(秒速・風速)みたいなもんです。

因みに、V(電圧)だけ時間に関係なく仲間はずれです。

単位時間あたりの量=速度なんで、具体的な「量」を表す単位がWhとかAh。「1Wを1時間使い続けると1Wh」ってな感じです。km/hが量になるとkmで[/h]が取れるのに対して、Wだと[/s]が付いてないからもんだから、時間記号を追加、しかもs(秒)からh(時間)とかさらに分かりにくくなってます。

そんなわけで「電力の量」を表す単位はWhなわけです。家の電気代の計量対象も電気自動車のバッテリーもWh表記です。

Ahとは何者か?

先に「電力は電圧×電流です」と言いましたが、電力の要素のうち電流のみに限定して量を表す単位です。でも先に述べたとおり「A(電流)だけでは、ほんとうの電力は分からない」と言うことで、Ahは「電力の量」を示していません。

Ahとはバッテリーの容量を表す用途で使用されてきました。バッテリーの電圧は多少変動するにしても、ある程度の範囲内で安定しているので「電圧を無視して、電流がどれくらいの時間流すことが出来るか」という意味で使われてきました。

バッテリーと言っても色々あります。1.2V, 1.5V, 3.7V, 12Vなどなど。

そんなわけで、バッテリーの容量を表す場合は「1.2V 3,000mAh」みたいな表記をします。電圧と電流が両方併記されているので「電力の量」が分かります。

巷のモバイルバッテリーの容量表記

殆どのモバイルバッテリーがmAh表記のみで、バッテリの電圧が書いてません。

これは、リチウムイオンバッテリーの普及により、長らく「リチウムイオンバッテリー=3.7V」という思い込みにより3.7Vの電圧表記が消えてしまったのだと思います。

これが凄く気持ち悪い。先の「このストーブは10Aです」って言うよりも気持ち悪い。

例えば、自称5,000mAhのモバイルバッテリー。以下のようなパターンが考えられます。

内蔵電池回路効率実際の出力出力3.7V換算PSE表記
A3.7V/5,556mAh90%5V/3,700mAh5,000mAh18.5Wh
B3.7V/5,000mAh90%5V/3,330mAh4,5000mAh16.65Wh
C3.6V/5,000mAh90%5V/3,240mAh4,378mAh16.2Wh
D3.2V/5,000mAh90%5V/2,880mAh3,892mAh14.4Wh

実際に出せる出力なのか、単純にバッテリーのスペックを表示しているかによって、実際の出力にこれぐらいの差が出ます。そして、今時はリチウムイオン電池も種類によって電圧が違います。

そんな訳で、PSEの規制により全てのモバイルバッテリーには「内蔵しているバッテリの容量ではなく、実際に外部に供給出来るWhの表記」が義務づけられました。

それなのに、実際の製品にはPSEの規制に従ってWh表記が印刷されてるんですが、カタログには載せてないところがまだまだ有って、キモチワルイなー、なんて思ってます。

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