単気筒の低速トルク

 昔「4st>>2st」

 今「2st>4stトレール>4stレーサー」

 4stレーサー(高出力モデル)の、低回転の弱さに嫌気が差して2stにしたわけですが、そんな話をしていたら昔の常識と逆になっちゃったって話を聞きました。

ちょっと思うところの個人的メモ。

4サイクルエンジン

タンブル・スワール形成の影響

持論ですが、4stの低回転のトルクについてはタンブル・スワール形成によって「いかに燃料と空気が混ざるか」による影響が大きいと思うんですよね。

燃料と空気の混合について、キャブやスロットルボディでやっていると思う人も少なくないと思うのですが、キャブもインジェクションも共通してビシャビシャの飛沫を吹いてるだけで、まだ、ただの燃料液体で空気と混ざってないんですわ。

実際に気化して混合気となるのはシリンダー内なんですよね。燃料はシリンダーやらバルブの熱に晒されてようやく気化しきるんですが、その時に重要なのがシリンダー内のタンブル流やスワール流という空気の渦。

その渦によって気化した燃料と空気がようやく混ざるわけです。

一般的に、高出力・高回転を狙ったエンジンだと、下記のようになると思います。

  1. 高出力を狙って吸気経路を拡大する。
    (スロットルボディ拡大、バルブ数増加、バルブリフト増加・・など)
  2. 開口が大きいので、低回転時の吸排気流速がすごく落ちる。
  3. ゆるゆるとしか空気が流れない。
  4. 燃料と空気が十分に混ざらないまま点火。

こんな感じ。

実際、前の4stハスク乗ってたときも、極低回転って単にトルクが薄いんじゃ無くて、1回1回の爆発はすごくトルク有るんだけどばらつきが大きくて、数回に一回ショボい爆発が混じる感じ。で、そのショボい爆発の時に「ストン」ってエンジンが止まっちゃう。

2バルブとかのトレールエンジン(たとえばセローとか)だと、もともと吸気経路が狭いんで低回転でも十分な流速と安定した爆発=トルクが得られるんだろうなぁ…と。

可変バルブタイミング機構とか載せられたら両立できるんでしょうが、重量/スペース制約の大きい二輪車だとおいそれと載せられない。

トレールやトレッキングバイク、Trial車は高回転必要ないし、MX(モトクロス)は低回転捨てきってます。そもそも、高回転で高出力を得つつ、極低回転もしっかりトルクを確保したいって用途がエンデューロ車だけってもんだから開発が進まないわけです。

2サイクルエンジン

2サイクルの場合、低回転が弱いのは主にシリンダーの吸排気効率の悪さによるものです。

幸いに混合気自体は、低回転であっても十分な広さを持ったクランクの一次圧縮時に十分に気化・混合出来ます。

4stと違い、下死点付近での吸排気を同時に行う為、ピストン圧による吸排気が期待できません。吸気側はクランクの1次圧縮の正圧、排気側はチャンバーの脈動効果+排気デバイス制御による負圧吸い出しに頼ってます。

排気側の脈動効果が曲者で、複雑な物理現象で昔は試行錯誤するしかなかったと思います。このあたりが昔の2stの「低回転より/高回転より」の所以です。

しかし今では、流体シミュレーションがかなり簡単に出来るようになったので、チャンバー形状も排気デバイスのポート形状も、昔よりかなりの最適化が進み「低回転スカスカ」なんていう2サイクルエンジンすっかり過去の物になりました。

4サイクルエンジンが技術本流となりながらも、基本的には四輪や多気筒が許される二輪ロードバイクの技術のお下がりを使うだけだったのに対し、2サイクルは「ED(エンデューロ)・Trial」 というニッチ用途にしか使われなくなったのが逆に幸いしたのか?独自の進化を遂げたように見えます。


そんなわけで、4サイクルエンジンが四輪や他の用途をお手本にしかしてこなかった間に、ED用途としては2サイクルエンジンの方がより最適化して凌駕していったように見えます。

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