錫製酒器で酒がおいしくなる?

お燗のおいしい季節になりました。アルミ製のちろりは持ってますが、錫製のちろりとか憧れはするものの、価格的になかなか手が出でません。

買いもしないのですが、ネットショップを回ってみたら気になる一文が…。

「錫の効果でお酒がおいしくなります」

…は?

ん〜、いまいち理屈が分からない、うさんくさい。根拠らしい物を探ってみたら、

googleで”錫 フーゼル油”を検索

なにやら錫がお酒に含まれるフーゼル油という、おいしくない成分?を溶かす/分解するから…という理由らしい。でもどうやって(科学的に)溶かすのかはどこにも書いてない(笑)。

フーゼル油というのも初耳ですが、これ自体は偽科学では無く、醸造時に発生する特定のアルコール成分(非エタノール)の総称を指す模様。科学的に物質も特定されています。

中には「錫が持つ高いイオン効果により」とか書いてるものもありますが、イオンとか言い出したらますます胡散臭い。

錫が酒造りに効果があるという根拠

さらに探っていくと、一定の科学的根拠らしい特許文献を発見。

醪あるいは粗留液中に銅、錫、亜鉛、鉄、銀、鉛またはこれらを含む化合物、混合物、合金を添加し蒸留するかあるいはその蒸留に際して発生する蒸気の通過する場所にこれらの物質を懸垂し接触せしめるときは醪あるいは粗留液中に含まれる不快臭発生の原因となるものは上記の物質に化合または吸着、吸収されて流出されない形となって除去せられるために不快臭なき優良な蒸留酒を得ることが出来る。

蒸留酒の品質改良法 特公昭40-004431/特許0450879 より

「吸着・化合」というのなら理解できます。「分解」となるとそれは触媒としての効果になるので、錫じゃぁちょっと違うと思うんですよね。そもそも分解されたあとの物質はどうなるのよ?と。

焼酎造りの一部では実際に取り入れられており錫蛇管で検索すると、実例が出てきます。

とは言え、特許の中身で示された判定方法は「5人の判定人による官能試験」という単純盲検のみで、二重盲検では無い。科学的な成分調査もなし。

そしてフーゼル油の言及もなし。フーゼル油説は一体どこから出てきたんだ?

ちょっと根拠に弱いんですが、けっこう引用されてるんですよね、この特許。

錫製酒器には効果が・・ある?

じゃぁ、錫製酒器でおいしくなるのは本当か?というと、まだそうともいえない。

上記の特許でも述べられているとおり、蒸留中に高温の蒸気を金属に触れさせることが肝となっています。お燗のように、たかだか50℃〜60℃程度の状態で器に注いだくらいで効果が出るのか、というと甚だ疑問です。

また「吸着・化合」ということは、表面に「おいしくない成分」が貯まっていくわけです。普通に洗ったぐらいでとれません。簡単に取れるくらいなら、逆に「おいしくない成分」が流出してしまいます。

焼酎造りの錫蛇管は、5〜6年ぐらいで交換しているそうなので理にはかなってます。能力が落ちるとかそう言うのでは無く、蒸気熱で錫蛇管自体が変形してしまって、管が詰まって使い物にならなくなってしまう事からの交換とかで。

結局のところ錫製酒器はどうなのよ?

科学的に調査した結果が見当たらないし、反応を促すにしても一般的にお燗の50℃~60℃というのはあまりにも温度が低すぎるし、個人的には「プラシーボじゃね?」と。

ただ、錫製酒器、かっこいいです。加工による独特の文様やら、その比重による重厚感とか。

あと気分的においしくなるとは思う。

カテゴリー: 未分類 タグ: パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です