「『化学』だとか絶対わるい物に決まっている」なんて言う人が今でも居そうです。食べ物で言うとビタミン剤とか砂糖とかプロテインみたいな感じ。栄養素の成分だけを抽出したもので,他の有機肥料やら堆肥やらと,含んでいる成分に違いは無いです。
「土地が痩せる」と言う話もありますが,それにはカラクリがあります。「化学肥料『だけ』を施肥しつづけた場合」の話。日本国内では1960年代あたりから化学肥料偏重となり,その後「土地が痩せる」事が各地で起こりました。従来の肥料と比較して化学肥料の手軽さと効果は,それはもう画期的で農家は従来の肥料の使用を一切止めてしまった訳で…。はじめの数年はそれでも良かったのですが,5年・10年と続けると「(1)土はサラサラの砂のようになり保水性を失い,(2)化学肥料をいくらやってもどんどん水と共に流れ出して作物はいつも肥料不足,(3)おまけに作物は病気にかかりやすい。」という「土地が痩せた」状態になってしまいました。
今では,これらの原因は「有機物の補給を怠った為」と言うことが判っています。作物の育つ「良い土」であり続ける為には,作物が吸い上げる肥料成分(窒素・リン・カリ)だけでなく,土の保水性を保つ繊維状の有機物や,時に分解により肥料成分を作ったり時に作物に害をなす細菌類の過剰な繁殖を抑えたりする様々な土壌細菌の糧となる有機物を定期的に補充する必要があります。今では有機肥料を使って有機物を補給しつつ,有機肥料だけでは足りない肥料成分を化学肥料で賄うというのが,今時の農業の常識のようです(とは言え,有機肥料(堆肥)は品質にばらつきが大きく取り扱いの難しい部分もあるようで…)。食事に例えれば,ビタミン剤だけでは調子がわるかったので,普通の食事とビタミン剤をバランス良く併用するようにした感じです。
化学肥料にも,過剰施肥による肥料分の流出→水質汚染という問題はあります。でもそれは量が多すぎるからであって,従来の肥料でも量が多ければ同様の事は起こり得ます。ただ化学肥料は肥効が強いので過剰施肥になりやすい,という傾向もありますが。
そんな訳で,こう言う理解をしているもんだから,化学肥料の使用を全否定した「有機野菜・有機農業」とか,肥料そのものを否定した「奇跡のリンゴ」とか,オカルトにしか見えないわけです。
まぁ好きな人は好きなようにやってれば良いよ…って感じなんですが,日本では2006年に「有機農業の推進に関する法律」なんていう法律が制定されてしまっていて,ここで化学肥料を使わないことに対して,政府がお墨付きを与えますよ,って言っちゃってるんで困ったもんだなぁと。しかも「有機JAS規格」では,一定の種類の化学肥料(無機肥料)や農薬の使用を認めているんで,さらにカオスでもう何が何だか…。
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