クランクケース用液体ガスケット

…について調べてみた。TE250のサービスマニュアルによると,クランケースのガスケットとしてLoctite5205というのが指定されていた。国産バイクでは,少なくともKLX125/YZ250FなどではThreebond1215が指定,その他,直にマニュアルを見た訳では無いけれどホンダのバイクではThreebonad1207B/1207Cなんかが指定されているらしい。
Threebond1207B/C/1215は共にシリコーンが主剤。シリコーン系のガスケット(シーラント)は建材やその他色々使われている。一方Loctite5205というは,シリコーン系とは全く異なるガスケットでアクリル樹脂が主剤でネジロック剤などでよく使われている模様。シリコーン系の硬化原理は,空気中の水分と反応し,反応過程でガスを遊離しながらの硬化。アクリル樹脂系は別名嫌気性接着剤とも呼ばれ,触媒としての金属に接した状態で空気を遮断すると硬化する。
作業性を考えると,ガスケットという用途では金属に挟まれて僅かな部分しか空気に触れることが出来なくなるので嫌気性のほうが良いように見える。空気反応タイプのシリコーン系では,組み上げてしまうとなかなか硬化が進みにくい。しかし,実際には加熱によっても反応を加速出来るので,生乾きのままエンジンをまわしてしまえば,硬化が完了する。あと,シリコーン系は硬化の課程で遊離したガスがでるんですが,オキシムを放出するタイプ(TB1215)だと銅合金腐食の恐れあり,アセトンを放出するタイプ(TB1207x)だとゴム・樹脂を腐食する恐れあり,だそうだ。また,シリコーンの特性として硬化後も継続的にシロキサンガスを遊離し続ける。シロキサンガスの悪影響はこちら。実は,PCメーカーでは,CPUの放熱パッドにシリコーングリスとかシリコーンゴムはシロキサン放出の観点から使用禁止だったりする。アクリル樹脂ではそのような副産物は無い。となると,やっぱり総合的に見ればアクリル系の方が優れているように見える。ただ,クランクケース合わせ面ではなく,応急修理的な場面に於いて厚盛りするような場合は,アクリル樹脂系では全く硬化できず,シリコーン系の出番となり汎用性は高い。
外車(特に欧州メーカー)ではLoctite(本社ドイツ,ヘンケル社)が一般的で,国産ではThreebond(本社東京)が一般的らしい。そして嫌気性接着剤はLoctiteの独壇場とか。結局はお国柄か。
とりあえずTE250のOH用に,Loctite518を用意した。国内では取り扱いが極端に少なく,ヘンケルジャパンのオンラインストアでようやく入手。5205は日本国内向けには販売されていなくて,海外でも一般向け販売もされておらず入手不可能っぽかったので,比較的よく似た特性の518をチョイス。耐オイル・耐水は文句なしだけど耐ガソリン性が若干弱いのが玉に瑕。
ちなみにTB1207xとTB1215では,耐オイル・耐水・耐ガソリン性ではTB1215のほうがイイっぽい。TB1207xは,耐オイル・耐水性能は仕様に記載あっても,耐ガソリン性が仕様に無い。ただ,通常,コンロッドとか銅合金使ってるんで,オキシムを放出するTB1215ってどうなんかな?みたいな気も。頻繁にオイル換えていれば,オイルで洗い流されて問題ない程度なのかも知れませんが。

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