不味いパック酒と酒税制度

日本酒の地酒は本当に美味しい。けれど売れていない、マイナーな存在。ブームになって今まで呑んでいた地酒が入手困難になるのも困るけれど、市場自体が縮小してしまって蔵元が立ちゆかなくなってしまい、酒造メーカーが潰れてしまっても困る訳で。
一過性のブームより「文化」として定着しないと市場としても続かない。日本古来の筈の日本酒は、外来の筈のビールに明らかに「文化」として劣勢だと思う。ブームも一巡したかと思うワインと比較しても、ワインよりも日本酒はニッチだと思う。文化として広く定着するには、もっと裾野が広がる必要がある。裾野を広げるには、比較的ニッチな存在の「地酒」ではなく、大手酒造メーカーの有名品がちゃんと市場をひっぱっていくような状況が必要だと思うわけで。例えばビールのような、例えばワインのブームのような。
で、一般的に日本酒に触れる機会というのは、紙パック入りの所謂安酒・パック酒。地酒の味を知っていると、なんであんなに不味い物が平気で売られているのだろうと思ってしまうし、地酒の味を知らなくても、パック酒の味しか知らなくて「日本酒=苦手」という話を聞くことも少なくない。
でも、酒販可能なスーパーへ行くと、パック酒のコーナーが大きく取られている。なんで?と思うものの、確実に需要として存在してる。その辺りを、酒税や「アルコール濃度あたりの価格」で見ていくと、一つの仮定が浮かんだ。
アルコール度数の高いお酒は少ない量でちびちびやれる。度数の低いお酒はがぶがぶ呑んで楽しめる。アルコール度数に注目して酒税を高さを比較すると、ビール>発泡酒>焼酎>日本酒の順になり、実は日本酒の酒税はかなり安い。ワインも実は酒税に限れば日本酒と同程度なのだけれども、実際には輸入品が多く関税が多く掛かかり日本酒より高い税率となる。主に安酒の実際の販売価格で、アルコール度数あたりの単価を比較してみると、

  • ビール:350mlあたり\180/アルコール度5%→アルコールあたり 10.3円/ml
  • 発泡酒:350mlあたり\140/アルコール度5%→アルコールあたり 8円/ml
  • ウイスキー:700mlあたり\1780/アルコール度43%→アルコールあたり 4.9円/ml
  • 日本酒:2Lあたり\1000/アルコール度15%→アルコールあたり 3.3円/ml

となり、日本酒は「最も安くて酔えるお酒」となってしまっている。
日本酒の税率の低さは、国内産業・国内文化の保護という意味合いもあるのかもしれないけれど、結果的に大手メーカーの「安い日本酒」造りを加速させ、「日本酒=安いけど不味いもの」というイメージを広く定着させたことになっていたら、なんとも不憫な話なんじゃないかと思ったり。

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