それでも本命は燃料電池だと思う

各方式と燃料の密度

巷ではハイブリッド車やリチウムイオン電池を積んだ電気自動車が世間を賑わせている。一方で,一時期話題になった燃料電池はぱったりと音沙汰を聞かない…。でも「エネルギー密度」という観点から見ると,電池というのは可燃物である燃料と比較してエネルギー密度が低い。どういう事かと言うと,ガソリンと同じだけの航続距離を実現するためには,ガソリンよりも重くてかさばるということ。それを計算で出してみたのが上の表。Webやらなんやらで拾ってきた値を元に作ったから,だいたいの値なんだけど。

動力機関としてエンジンでもモーターでも,燃料や電池のもつエネルギーのうち一部しか動力として得られない。レシプロエンジンで25%,モーターで60〜70%と言われる(表ではモーターは65%とした)。残りは熱となって捨てるだけ,モーターのほうがかなり効率は良い。燃料電池の場合は,燃料電池自体の変換効率も影響し,電気自動車よりエネルギーの利用効率は落ちる。そうした値を考慮して出した値が,燃料または電池の質量あたりと体積あたりの仕事量(≒航続距離)。そしてそれらを,ガソリン+レシプロエンジンと比較してみた。

今のリチウムイオン電池では,ガソリンと比較して質量比2%・体積比6%の航続距離しか得られない。これが技術革新による改善を行ったとしても「理論限界」として分かっている値でも質量比12%・体積比49%しかない。足りない分はガソリンタンクより重くて大きな電池積んでなんとかしている。レシプロエンジン→モーター化でも小型軽量化出来ているので,その余裕も電池の搭載スペースに充ててるからもうちょっとマシではあるんだろうけど。そして電池には「充電」という致命的な問題がある。燃料のようにドボドボと注ぐわけに行かず,一定の時間を掛けてしかエネルギーの補充が出来ない上に「充電・放電」を繰り返すことによって電池は寿命を迎える。その回数もたったの数百回。サンデーユースならまだしも,毎日乗れば2年と保たない。車検の度に電池買い換えとか。

一方で燃料電池,メタノールを使うものと水素を直接使うものとあるけれど,技術的に先行しているのは水素のほうらしい。密度については近々実用化が可能とされているレベルの70Mpa圧縮タンクに充填した状態の値。体積比ではガソリンにまだまだ及ばないものの電池よりはかなり良い,重量比ではもともと水素の重量あたりエネルギー密度は高い事もあり圧倒的な優位性がある。実際には水素タンクの重量の影響もあるけれど,水素自体は圧縮状態でも非常に軽い。水素スタンドの整備も視野に入れているらしいけど,燃料補充の時に70MPa以上の圧力で充填ってそのへんどうなんだろう?という疑問は残る。

そしてメタノールを用いたものだと,これはもうガソリンにかなり近いレベル。ただ,メタノールが使える燃料電池は電池自体の耐久性とか始動/停止に時間が掛かるとかで実用化にはまだ課題があるとか。メタノールだと今までと同じ液体燃料の扱いだし,燃料電池の問題さえクリアになればこちらの方が本命になりそうなんだけどなぁ。水素ステーションなんか整備しなくても,既存のガソリン貯蔵施設の改修で対応出来そうだし。

最後におまけで,最近本当にめっきり聞かなくなった水素エンジンの場合も比較してみた。すると,効率の悪いレシプロエンジンで直接燃やすよりも,燃料電池+モーターのほうが若干効率が良い事が分かる。これじゃぁ今更水素エンジン開発するメリットが見あたらない。

重くてかさばる電池を積めるだけ積んだ電気自動車なんて,燃料電池自動車が実用化されたら過渡期の隙間商品で駆逐されてしまうような希ガス。それでも電池式電気自動車を開発するのは,燃料電池車への技術面での布石じゃないかと思う訳で。燃料電池が実用化されてもモーター駆動はそのままだし,急加速や回生ブレーキを有効に使うには燃料電池+リチウムイオン電池という構成になるかと思う。

そんなワケで,車もバイクもノートPCもスマートフォンも,全部メタノールで動いたらいいのに!とか思ったりするわけで(ぉ。

2011/12/29追記:デミオやミラ・イース等の超低燃費ガソリンカーは,ガソリンエンジンながら効率が40%近くにもなっているそうな。既存技術の改良も侮れない。ますます電池駆動EVには辛いと思う。

2015/1/18追記:水素貯蔵について有機ハイドライドという方法で液化できるっぽい。→2015/1/18