某コラムにて,物と情報について人がどのように価値を見いだすかということを,それが私有出来るかあるいは共有されてしまったかという視点について書かれていた.人が対価を払いたいと思うか否かというのは,それが私有できるか出来ないかであるから,共有できてしまう情報については対価を払わないというような事が書かれていた.
それを読みながら,ふと別の事を考えていた.じゃぁ「サービス」はどうなのかという事を.
物でもないし情報でもない.共有ではないが私有と言えなくもないが所有という訳ではない.強いて言うならば,その場限りで受けられる情報.しかしそれは何らかの形を借りて存在しつづける情報とは異なる.一番適切な表現は「体験」ではないかと考えた.すると,ここで体験というものに対する価値について一つの考察が浮かんだ.
例えば高級な宿泊施設に泊まって受けるような「サービス=体験」というのは,たいていの場合金銭という対価を必要とするが,物質的には何も残らない.なんらかの物質的な物を得たり,所有(私有)したりする為に物々交換の一つの形態として対価を支払う事と比較して,一切何も物質的な物が残らない事を,時には贅沢の象徴のように言われる事もある.
しかし,価値というのは全て「体験」の為にあるのではないかと考えるとどうだろう.
例えば何らかの「物」を得る為に対価を支払ったとする.人はその「物」が道具であれば,その道具の恩恵による「体験」に対して価値を見いだしているわけである.また,実際には何の役にも立たないような収集品の類であっても,人はその「物」を所有する事によって得られる,所有感という「体験」や鑑賞に値するもの(例えばCD/DVDや本など)であれば,鑑賞という「体験」ができる事,さらに所有する事によっていつでもその「体験」を再現できるかもしれないという事に対して価値を見いだしている.
結局,人が生きていくということは良きにせよ悪きにせよ体験を得るという事であって,欲というのはより良い体験を求める行為であると思う.「物欲」という言葉があるけれど,それはそれらの「物」から得られるであろう体験を求めているわけであって,「物」そのものに価値があると思うのは錯覚に過ぎない.
某誌にてiPodの成功の鍵として「ユーザー体験(user experience)を重視した」というような事が書かれていた.でもそれは,これまで述べた内容からすると,それは当たり前すぎるくらい至極当然の事である様に思える.しかし,現状のメーカーの製品開発に於いては「製品という物」を対象にしか見ていないのが,悲しいけれど技術至高主義に陥っているメーカーの製品開発の現状ではないかと思う.
ここまで述べた内容は,特定分野の製品・商品に限らず,他者に対し何らかの価値を提供して対価を得るという事(おそらく全ての商業活動および労働活動)に関して,普遍的に言える事ではないだろうか.
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- 2002年11月以前の日記(tDiary移行前)はこちら
VFX9000やMOONSOUNDは普及したとは言えないけどMEGASCSIは普及した訳で、その差を思い出しながら読んでしまった。
お客様の体験増進に貢献する技術かの度合いの差だったのかなと。
まぁそれは「創る」側か「受ける」側かの差で,「受ける」側としては鶏と卵の狭間だたしのぅ.